関係詞が口からスラスラと出てきた!
無生物主語で始める文章が言えるようになった!
と実感することができた本をご紹介します!
横山カズ先生の「最強の英語独習メソッド パワー音読入門(アルク出版)」です。
横山カズ先生は同時通訳者、翻訳家、英語講師としてご活躍されています。
本書は2015年6月に出版された、横山カズ先生ご自身が試行錯誤の上に築き上げたメソッド、「パワー音読(POD)」について書かれた最初の本です。
ボクは出版の1年以上前に横山カズ先生の存在を知り、セミナーに参加してパワー音読を体感し、本書が出版されてすぐに購入し活用してきました。
以来、パワー音読を意識した音読が学習習慣の一部となり、特に英語スピーキング力が向上したと実感しています。
本書の内容や良いところ、感じたことなどをご紹介します。
「パワー音読入門」の目次
「パワー音読入門」は以下の内容となっています。
- はじめに
- パワー音読(POD)理論編
CHAPTER1 パワー音読(POD)が生まれるまで
CHAPTER2 パワー音読(POD)の実践法 - パワー音読(POD)実践編
厳選! POD入門用基本例文
UNIT1 著者お薦め文法・表現
UNIT2 会話に便利な文法・構文
UNIT3 会話に便利な単語・表現
「はじめに」のところで、パワー音読(POD)が英語を流暢に話すことのみに特化したトレーニング方法と定義されています。
パワー音読理論編では、横山カズ先生が通訳者に憧れを持ったところから、英語に対する挫折、英語が話せるようになるための実践、通訳者としてデビューして感じたこと、そしてパワー音読の誕生という流れでエピソードが書かれています。
なお、本書よりも横山カズ先生の過去の体験について溢れ出る感情とともに網羅された内容が、当ブログで以前にご紹介した書籍に記載されています。こちらもぜひご参照ください↓

そして、パワー音読の方法とパワー音読に最適な英文がそれぞれのUNITにつき15個、合計45個の英文が掲載されています。
パワー音読のメソッドについて
パワー音読(POD)には、
- オリジナルPOD
- 発展型POD
の2つがあります。
オリジナルPODは、
50~100語の英文素材を10~15分感情を込めて、なるべく速くたくさん音読する」
最強の英語独習メソッド パワー音読入門 p.32より
です。
ボクはこの方法を中心として、同じ英文を時間を測って何回も読む方法で本書を1周しました。
発展型PODは以下のステップで15分程度で1セット音読する方法です。
- チャンク音読
- ノーマル音読
- ささやき音読
- 和訳音読
- 感情音読
- タイムアタック音読
後に発行される横山カズ先生の著書にはこちらのやり方を中心としてパワー音読が紹介されています。
まずはチャンク(意味のかたまり)ごとにゆっくりと音読して理解するところから始まり、センテンスレベルで英文を捉え、和訳もしっかりチェックし、話者やその状況をイメージしながら感情を込めて音読し、最後にできる限り速く音読できるようにする、そんな流れになっています。
丁寧に、英文をしっかりと噛み砕きながら徐々に消化していくステップですので、音読に慣れていない方や、英文理解がやや難しい素材に有効だと感じます。
「パワー音読入門」の良いところ
1セットわずか15分だから学習が継続できる!
英語学習における最大の悩み事の一つに、
始めたはいいけどなかなか継続できない…
ことにあると思います。
学生であれば他の教科・科目、部活動、社会人であれば仕事や家庭生活、その他さまざまなことがあり、まとまった時間が取りにくい日もあり、なかなか継続できないことが悩みの種であるという人は少なくありません。
このパワー音読は15分以内で完結するように作られています。
先ほど紹介した発展型PODは6ステップ全てを最大限こなして約15分です。
15分の音読活動で、文章の意味と感情を捉え、同じものを何度も音読することによって少しずつフレーズやセンテンスが自分の体にインストールされる体験ができます。
15分であれば、起床後や就寝前、スキマ時間など活用すれば十分に確保できる時間です。
疲れ切っている中で英語学習をするのが難しい…
とお悩みの方、大丈夫です、本書の対象レベルは「英検3級/TOEIC®︎テスト400点〜」ですので、パワー音読用英文は入試や英検上位級のような難解なものではないです。
もちろん、最低限の英語の基礎文法知識と基本語彙を知っている必要がありますが、各英文にポイントとなる項目の簡単な解説がついています。語注や日本語訳もついているので、安心して取り組むことができます。
口をとにかくたくさん動かす、丁寧に英文に込められた意味と感情をすり合わせて音読するという活動なので、そういう点での負荷はかかるかもしれませんが、難解な英文を読んで頭をフル回転させる、臨機応変に英会話をするといった負荷とはまた別のものです。
最初のうちは口が疲れるかもしれませんが、「音読スピードが上がってきた!」「覚えた表現が自然と口から出てくるようになった!」という体験が得られるので、15分やり切った後の爽快感は格別です!
汎用性が高い英文が豊富!
50~100語から成る英文が45セットもあります。
その中に、そのまま使いたい!使えるようになりたい!と思う表現がたくさんあります。
お気に入りの表現をまずは日本語から引用します↓
未来はどうなるかわからないけど
最強の英語独習メソッド パワー音読入門 p.65より
自分に何ができて何ができないかを人に決められたくはない。
努力はきっと報われるって信じてる。
自分がどれだけ真剣になれるかにかかってるんだ。
UNIT1の最初の英文の後半部分です。内容から察するに、英語通訳者になるためにもがいていた横山カズ先生の心情だと感じます。
とても共感することばで、自分の胸の奥に刻みたいことばです。
英語を引用すると、
I’m not sure / what the future holds for me,
最強の英語独習メソッド パワー音読入門 p.64より
but / I don’t want to let other people decide /
what I can do / or what I cannot do.
I believe / hard work will pay off / in the end.
It just depends on / how serious I can be.
原文どおり、チャンクごとにスラッシュを入れています。
引用箇所の英文の語注は、
hold [動詞] 用意している
let S V : SにVさせる、SにVさせておく
hard work [名詞] 努力
pay off 利益をもたらす
です。
後半部分の引用ですがこの範囲だけでも、関係代名詞whatや使役動詞let、イディオムのpay offなどの使えるようになりたい表現が満載です。
もっと日常生活に即した内容もあります。
日本語と英語を併せて引用します↓
私、彼女の人への接し方が好きなんです。
人としてどうあるべきか、教えてくれるからです。I like the way she acts / toward other people.
最強の英語独習メソッド パワー音読入門 p.68-69より
It shows me / the way I should be as a person.
友人間や職場での憧れの人について話すときに使える表現ですね。
家の中にいるのはもったいないな。
It’s a shame / to stay inside.
最強の英語独習メソッド パワー音読入門 p.76より
体重計に乗るぞ。
あ〜、やだ!太っちゃった!
ちょっとやせなきゃいけないわね。I’m going to stand on the scales.
最強の英語独習メソッド パワー音読入門 p.102-103より
Oh, no! / I’ve gained weight!
あ〜、ひっどい頭痛、最悪だ。
昨日の晩、あんなに飲まなければよかった。Ah, / I hate this horrible headache.
最強の英語独習メソッド パワー音読入門 p.104-105より
I shouldn’t have drunk so much / last night.
このような、日常生活において誰の身にも起こりそうなことが豊富に英文として載っています。
英文の内容がイメージしやすいので、感情を乗せて音読しやすく、基本文法と基本語彙で構成されているため、英語の体幹が身に付く内容です。
発展型PODで1日1ユニット15分行うと、全部で45ユニットなので1ヶ月半で1周することができますね。
ユニークだけど大事な「ささやき音読」と「和訳音読」
前述のとおり、本書を最初に実践したときは、タイムアタック音読のみにフォーカスしたオリジナルPODで取り組んでいました。
時間をあけてから本書に再度取り組み、基本から見直そうと思って発展型PODにトライしました。
正直に告白すると、最初に発展型PODを見たときに、「ささやき音読」と「和訳音読」って必要あるのかな?と思ってしまったのです。
その意義と効果については本書にも触れられていますが、「ささやき音読」は文字どおりささやくように声を出さず、息を吐くのみの音読です。
息だけで音読すると、母音の音が全く出ないのです。そこで、子音の音をしっかり出すことが求められます。
“p”や”t”など、英語初学者にはなかなか意識できない息を溜めてからたくさん吐くタイプの子音の音などをしっかりと出す訓練です。
他の音読トレーニング本にはないユニークなトレーニング方法ですね。
もう一つの「和訳音読」は、これも文字どおり、和訳を音読します。
ボクは最初は目を通せばいいと思っていましたが、いざ和訳を音読してみると、その内容がよりいっそう体内に染み込んで浸透してくる感覚があります。
英文を音読することに慣れてくると、英文を音読することが目標となってしまいがちです。
パワー音読で大事なことは、英文と感情を密接に結びつけることによって、ある状況で同じような感情が湧き上がってきたときに、体内にインストールされた英文を力むことなく自然に流暢に英文を発することができるようになることです。
一見理解している英文であっても、和訳を読んでみてから音読すると、より英文が自分のものになったような感覚があります。
英文を捉える力を身につける
横山カズ先生が学生時代に英語で挫折しながらも、夢を諦めることなく努力と試行錯誤をして創り上げたパワー音読について網羅された、「パワー音読入門」の良いところを書きました。
ステップに従って、15以内の時間で、本書に掲載されている英文を音読することで、少しずつ英語の瞬発力がついていくことを体感することができます。
しかし、本書の肝はもう一つあると感じます。
POD理論編の14~15ページに、大学時代の留学生と友人数人との会話においてやりとりした内容が書いてあります。
大阪の街に飲みに行ってみようという話になって横山カズ先生の友人の誰かが「あの辺は”ぼったくり”が多いからな気をつけないとね」と言ったそうです。
それを留学生に説明しようとして、「”ぼったくり”って英語でどう言うんだろう?」と考え込んでしまったそうです。
ボクも以前はそうでしたが、あるときパッと日本語が思い浮かんだときに、「◯◯ってなんて言うんだろう?」と考えたときに、「ぼったくり」のようなものであれば何か名詞のようなものをイメージして脳内でことば探しを始めてしまいます。
その次に、関係代名詞を使って文章で考え、ぼったくりに該当しそうな動詞を探しますが、そうしている間に時間はどんどん過ぎてしまいますので、会話が流れてしまいますよね。
話を戻すと、そのとき英米語学科の女の子がサラッとこう言ったそうです。
“They’ll take all your money.”
(お店がお金を全部とっちゃう)
最強の英語独習メソッド パワー音読入門 p.15より
横山カズ先生が本書以外でもおっしゃっていることですが、日本語そのものがどんな意図を持った文章なのか、どんな行動を表現するものなのかを掴んで、英語の文構造の「A is B(AはBである)」または「A does B(AはBする)」に落とし込むという発想です。
「ぼったくり」を試しに辞書で引いてみると、”rip-off”や”overcharge”という単語が出てきます。
単語を覚えてそれが瞬時にアウトプットできればそれに越したことはないですが、「ぼったくり」が意味するものを英語の基本文構造に当てはめていけば、英語学習初期に習うシンプルな語彙と文法だけで表現することができますね。
この発想を常に念頭に置いてトレーニングをすることが、英語を流暢に話すことにつながっていくのだと感じました。
横山カズ先生のその他のオススメ書籍
まず最初にご紹介するのは、「英語に好かれるとっておきの方法(岩波ジュニア新書)」です。
今回ご紹介した「パワー音読入門」の最初に書かれている、パワー音読が生まれるまでの横山カズ先生のエピソードが詳細に書かれた本です。英語学習を頑張っている人や挫折しそうになっている人、これから始める人にもオススメの本です。
後半は本書と同様にパワー音読の6ステップとおすすめの英文等が書かれてあります。新書ですので持ち運びに便利ですね。

続いて、「英語”瞬発”スピーキング(IBCパブリッシング)」です。
こちらの書籍も理論編と実践編に分かれています。
英文自体は他の書籍と比べ多くはありませんが、本書が他と違うところは、英語が聞き取れるようになるための発音のポイントと練習が初学者にもわかりやすく書かれてあるところです。
具体的には、聞き取りが難しい冠詞・前置詞の発音の仕方(聞こえ方)、アクセントの位置がオリジナルのカタカナ表記で書かれてあります。
1日5分からできる音読トレーニングが10日分用意されているので、パワー音読を気軽に始めてみたい人にオススメです。
詳しくは当ブログのこちらの記事をご参考ください↓

次は、「3分間パワー音読トレーニング(DHC出版)」です。
今まで理論編で書かれていた横山カズ先生が通訳者になる(パワー音読が生まれる)までのヒストリーが冒頭でマンガで描かれ、パワー音読のやり方とパワー音読用英文が掲載されています。
タイトルにもあるように、3分間(余裕がある人はもうプラス3分間)で学習が完結するように構成されています。
1セットの英文は、「パワー音読入門」よりもかなり短く、10語〜20語程度です。他の書籍と違うところは、語注や表現に対する解説が豊富なところです。
最後に、「ビジネス英語パワー音読トレーニング(DHC出版)」です。
パワー音読用英文が、ビジネスの場面で想定されるやりとりになっています。
ビジネスでの同僚とのやり取りから自己アピール、質問の応酬を受ける場面でのサンプル英文は、ビジネスで英語を使う機会が多い人にとってはとてもやりがいがあると感じます。
まとめ
「パワー音読入門」は、音読を英語学習に取り入れたいけどどのようにやっていいかよくわからないという人、
英語音読をしているけど、なかなか上達した実感が持てない人、
英語のスピーキング力を向上させたい人にオススメの本です。
取り組むには最低限の英語力(対象は英検3級/TOEIC400点以上)が必要で、関係代名詞や仮定法、無生物主語などの文法項目を含む英文が扱われています。
横山カズ先生の解説がありますが、英文法でわからないところや曖昧なところは手持ちの文法書を確認していくとより学習が深まると思います。
語彙と英文法の知識を抑えた上で、英文の内容に想いを馳せ、イメージを膨らませて音読し英文と感情をリンクさせるところがキーポイントです。
そのようにして学習した英文法や覚えたい表現は、何よりも深く学習者の脳内に定着していきます。
15分1セットですので、まとまった時間が取れない人でも学習がしやすく、効果も感じられるようになると思います!
毎日15分から始める音読が、流暢に話せる未来の自分にリンクする、そんな自分を思い描いてボクもパワー音読します!
画像引用元:Amazon .co.jp